『永遠の0』百田尚樹

この本は本屋さんでのプッシュを見て以来、気になっていた本でした。
気になりながらも、ずっと読まなかったのはなぜか。
一つは本の分厚さ。
そしてもう一つは太平洋戦争の特別特攻隊を題材にしたという内容。


数年前に知覧を訪れてから、
特別特攻隊をどう捉えるべきか。
自分でも答えが出ておらず、
半ば思考停止の状態になっていた。
知識不足だけでなく、
実際に起こった事実とこれまでの自分の生きてきた道を重ねることができない想像力不足。
分かったつもりになるのは簡単だけれど、
知覧で見た幾枚もの手紙。
それらの存在が、安易な理解を許さなかった。


それでも読まずにいたこの作品を読むきっかけになったのは、
先輩の角さんが
「よかったよ」
「読んでみたらいいが」
と何度か勧めてくれたからだ。
これが別の人であったならば、
読んだかどうか。
彼が勧めるのであれば。
そう思えるほど、彼とはモノの見かたや価値観が近く、
ともにキツイ時期を過ごした同志だった。


太平洋戦争時、職業軍人でありながら、
「生きて家族のもとへ帰りたい」と公言し、
周囲から「臆病者」と軽蔑された凄腕パイロットの姿を、
そんな彼がなぜ特別特攻隊として散ったのか
60年後、孫が取材していくなかで彼の姿を浮かび上がれていく作品です。
戦争という非日常のなかで、彼の存在は異端であり、
彼への思いは、その人の立場によって変わります。
また、時代が流れたことによって変わっていった思いもあります。
ただそこには同じ人間が生きており、
時代における価値観が異なっただけです。
戦争はよくない。
現在では当たり前のこととして言われていることです。
しかし、既成概念として、言うだけなら簡単なのです。
一人ひとりが考え抜いて、その答えを出す必要があり、
その言葉にどれだけの裏付けがあるのか。
自身の価値観にしているのか。
そう問われているように感じられる作品です。


永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)