『舟を編む』三浦しをん

三浦しをんさんが本屋大賞2012に選ばれたと聞いたとき、
別段、驚きはなかった。
直木賞作家だからというわけではなく、
これまでに読んだ彼女の作品から、
近いうち、選ばれるはずだ。
そんな思いがあったからだ。


舟を編む

舟を編む


『風が強く吹いている』、『神去なあなあ日常』、
唯一のシリーズ物である『多田便利軒』シリーズ 。
そして今回の『舟を編む』。
・・たくさん読んだ気でいたけれど、
数えてみればほんの5冊しか彼女の作品を読んでいない。
それにも関わらず、
彼女の作り出す物語の魅力にすっかり参ってしまっている。
箱根駅伝を目指すランナー、林業従事者、探偵、
そして今作の辞典編集者。
どちらかといえば、マイナーな、
一般には知られていない職種の、主人公の魅力に
すっかり参ってしまっている。


登場人物はすべて曲者ぞろいで、
現実にそばにいたのなら、
あまりお知り合いにはなりたくないかもしれない。
ただ、彼らはとにかく一所懸命なのだ。
どこか間違えた努力をしていることもあり、
それがおかしく恥ずかしく思える場面もあるけれど、
物語の中で彼らはスポーツに、仕事に、
とにかく生きることに一所懸命で、
それが無性に格好いいのだ。
僕には真似できないかもしれん。
そう思えるほどの一所懸命さがあるのだ。
恥ずかしくて、格好いい。
人間的魅力に溢れた登場人物を、
気がつけば応援し、気がつけば励まされる。
それが彼女の作品の特徴だろう。


おもしろい一冊だった。
人物や内容は、これまでの作品で、一番マンガに近い。
文章が映像化しやすい。
だからこそ売れているのだろう。
どうということないのだけれど、
両極化って言葉が浮かんで消えない。