『ミラクル・ジャーニー わが子を癒したモンゴル馬上の旅』ルパート・アイザックリン

自閉症の子どもを癒すためにモンゴルへ家族で旅に出て、
モンゴルのシャーマンに会うことで、わが子がここまできるようになった。
シャーマンすごい。奇跡だ!ってお話。


そう書くと身も蓋もないのだけれど485パージかけた旅の話。
アメリカ(著者はイギリス出身だけど)の文章らしく長い長い。
不要だろうと思える部分もたくさん。
普段、シンプルな文章に慣れているせいか、
たまに海外(アメリカ)の文章を読むとグッタリしてしまう。
そこまでして厚みを増やさなくても・・・そう思えてくる文章が多い。
あっちだと分厚くないと売れないのかな。


最近、馬に興味を持ち始めた。
あまり動物が好きでないこともあって乗馬に一切興味なかったのに、
乗れるようになりたい。
突然、そう思うようになった。
そうすると不思議なことに、
これまで関心を寄せたこともない国にも目がいくようになった。
具体的にはシルクロード近辺の国々だ。
モンゴルはシルクロードに入らないだろうが、
小学校で読んだ『スーホの白い馬』や、
チンギス・ハンのモンゴル帝国などから、
馬のイメージが強い国なのでこれまた気になりはじめていた。
そんな時期に偶然、この本を見つけた。
モンゴルだけでなくシャーマニズムも絡んでいる風であったことも
この本を手に取った一因だろう。


西洋の人から見たシャーマニズムがなかなかおもしろい。
もともとトラベルライターでアフリカ系のシャーマンや
インディアンとの接点が多々ある筆者。
一般的な西洋人に比べ、精神世界への偏見は少ない方なんだろう。
シャーマンがトランス状態におちいる以外にも
アフリカ系のシャーマニズムとモンゴル系のシャーマニズムの共通点など、
読んでみてなるほどと思わされる箇所も多かった。
確かに両者とも動物や自然を大切なものとしている。
トランス状態で見るものも共通しているなど、初めて知ったこともある。
そんな筆者だが白色人種特有の傲慢さはしっかり持ち合わせている。
どことなくモンゴル(アジア)を下に見ているよう感じられる部分や、
自分たちの行動は常に正しいと強く思っている部分、
結果オーライ的な考え方など、
読んでいて不愉快な気持ちになる部分も少なくない。
今はアメリカに帰っていった知り合いのアメリカ人男性を思い出した。
悪い人ではないのだろう。けれど、深い友達にはなれそうにない。

何より、なぜモンゴルへ向かったのか。
作者が馬好きであることや、自閉症のお子さんと馬の相性がいいことなど、
理由にできることはいくつかあるが、決定打がない。
そもそもお子さんの名前はアフリカのシャーマンの名前をもらったのに・・・。
インディアンのシャーマンは特集されつくした、
アフリカのシャーマンはすぐに会える。
文章や映像して売ることを考えれば・・・モンゴルだ!!
どうしても商業性を感じずにいられない。

旅の最終地点、会いにいったシャーマンが
「アフリカのシャーマンがもっとも強力」と言ったのは
たちの悪いジョークだ。


アメリカではドキュメンタリーを元に『the horse boy』ってタイトルで映画化したみたい。

ミラクル・ジャーニー わが子を癒したモンゴル馬上の旅

ミラクル・ジャーニー わが子を癒したモンゴル馬上の旅